コミュニティの未来/起業家たちの “WORK-STYLE” SHIFT

コミュニティ活用法
コミュニティ活用法

オンラインサロンの登場から数年。

継続課金の仕組みとして「ひとりビジネス」をする起業家たちに定着しつつあります。しかしまだ、コミュニティの本質について議論が繰り広げられる段階にはまだ及んでいない印象も一方であります。

そこでコミュマネ協会では、ワークスタイル研究所代表のビジネスモデル構築専門コンサルタント鈴木 秀一郎さんと、オンラインサロンfor youを運営するWEBコンサルタント本橋 へいすけさんを迎え、これからの「起業の在り方」や「コミュニティの在り方」について、中里桃子と対談形式で語っていただきました。

(聞き手:株式会社ソレナ 大崎博之)

 

【第1部】鈴木 秀一郎 × 中里桃子

#01─コミュニティで稼げる人、稼げない人の差とは?

──個人事業者による「コミュニティ作り」が普及していますが、マネタイズの部分で苦戦する人が多いのはなぜでしょうか?

中里:私はこれまで3,000人を超える事業者に対して、オンラインサロンの作り方を始めとして「コミュニティ」の構築・運営を教えてきました。ところが実際に行動を起こしてコミュニティを作る人は10%ぐらいで、そこからマネタイズできる人はさらに限られます。

独自に統計を取ってみると、そもそも自身で立ち上げたスモールビジネス自体があまりうまくいっていないケースが多いことに気づきました。コミュニティを手段として稼ぐ以前に、起業してお金を稼ぐことがどういうことかを理解していない可能性があるなと思ったんです。

これまで会社員として働いてきた方々は、会社が作ってくれたお金の流れの上を舟で進む「漕ぎ手」だったわけです。ところがいざ起業となると、いきなり水源を自分で掘り当てようとするんです。起業未経験でそんなことをしていたら、掘ってる間に死んじゃう(笑)。

そうではなく、どこにお金の流れがあって、誰が稼いでいて、その人はどんなことに困っていて、それを解決するために自分はどのポジションを取ればいいのか。そういうことを考えることが大事だと思うんですよね。

私はそれをサッカーのパス回しに例えたりもするんです。自分たちの試合と、他人の試合が同じフィールドで開催されているのがビジネスだと思っていて。

そこではいろんな人たちがドリブルしたり、パス回しをしているんですけど、マネタイズが苦手な人はボーっと立ってるんですよね。当然それでは自分の試合には勝てないし、ビジネスにおいては他人の試合も勝たせる動きもしなくてはいけません。

ここでいうパスというのは、人から与えられたチャンスだったり、声をかけてもらったりする瞬間のことなのですが、ボーっとしている人は自分がどう振る舞えばいいのかがわかっていないように感じるんですよね。

 

鈴木:僕は現在、起業コンサルタントとして、ゼロからファーストキャッシュを稼ぐまでを主に支援していますが、やはり感じるのは「お金やビジネスの教育」に関する背景ですね。

商家では家訓としてお金やビジネスを学ぶ習慣があります。だけどサラリーマン家庭に生まれた人は、そもそも学ぶ機会自体がないんですよね。だからこそ最初の、1,000円でもいいから稼ぐまでの一歩が大切なんです。僕はそれを「1ラウンド目」と表現しています。

それが土台となって、2ラウンド目、3ラウンド目と進めるんですよね。

お金やビジネスを学べる環境に幼少期から触れられればいいですが、多くの場合はそうではない。過去~現在までの経験値、リソースに差が生まれてしまっているのが日本の現状です。

そこに課題があると僕は感じているので、意欲はあるけど何から始めたらいいのかわからない人たちへ向けて、最初の小さな成功体験をサポートしているわけです。

一度でも自分ができることで人に貢献し報酬を受け取れると、感謝もされるし自分も喜びを感じられますよね。そうやって価値の循環がぐるぐる回り始めると、どんどん自分のスキルやサービスの精度も上がって単価を上げていくことができます。

ただ難しいのは、1ラウンド目をクリアしたからといって、誰もが2ラウンド目にいけるとは限らないということです。当然そこには、苦しいことや乗り越えなくちゃいけなことがある。何があってもやり抜く力や強い目的意識がないと挫折しちゃいます。だけどそこには、第三者が介入できる限界があると思っていて。

数年前にキラキラ起業ブームみたいなのがあったけど、起業をそれっきりで止めちゃった人は、その時点で「必然性」がまだなかったんじゃないかと思うんです。

コミュニティも同じで、過去~現在までの経験値の差や、お金・ビジネスに関するリテラシーの乖離があるからこそ「稼げる人・稼げない人」の差が生まれてしまう。コミュニティをすぐに作れる人は、これまでの人生で色々な人に関わって、貢献してきた事実が、要素として絶対的にあるわけです。

コミュニティオーナーって、言ってみれば周囲をつなぐハブみたいなものですからね。

 

#02─約束を守れる人が、ビジネスの上手い人!?

──これまでの経験や、育ってきた環境もマネタイズに影響を与える。だとしたら、これから新たに「稼ぐ能力」を身につけたい人はどうすればいいでしょうか?

中里:私からは2つ提案があります。

1つは「自分の現在地を知る」ということです。もう少し言えば、自分の心の穴を見ているのか、社会の課題解決を見ているかの違いですね。先ほど鈴木さんから「キラキラ起業」のお話がありましたが、ほかの人が起業して輝いているのをみて「自分もそうなりたい!」という人は独立・起業はしないほうがいいと思います。

よく見かけるのが、起業塾や経営塾に高いお金を払ってから「自分は起業を通して何がしたいんだっけ?」と心に迷いが生まれるケースです。

そうすると、私たちは事業を成功させるためにコンサルティングをしているはずが、いつの間にか心理カウンセラーやセラピストのような機能になってしまうことが多いんです。起業やコミュニティの手段を考えることはいいと思いますが、まずは自分の「現在地」を知ってから臨んでほしいですね。

2つ目の提案は「約束を守る」ことです。お金っていうのは、約束を守る人のところに集まるという原理原則があるからです。稼ぐことができない人は、それを知らないのかもしれないって、時折感じるんですよね。

例えば手取り20万円で借金がある人は、その範囲内で暮らすという約束を守れていないことになります。自制心、現状認識能力があればできることなのに、それができない。そういうところを周りの人は見ているので、お仕事の依頼をしたいと思ってもできないんですよね。

あとね、自分から「それ手伝います!」と名乗りをあげたものの、〆切を守らない人がかなりの数いるんですよ。注意力散漫というか、その瞬間からその人にはもうパスが回ってこなくなります。

少なくとも私はもうパスを出せなくなってしまう。これは私の感覚でもあるんですけど、人からの信用でコップが満たされて、溢れだした時にお金やお仕事が発生すると思うんです。この人は約束を守る人だから安心して任せられる。

表面的な言葉のやり取りだけじゃなく「いま自分は何を約束して、何を期待されているんだっけ」と自問したり、こうした内的なコミュニケーションを大切にすることでビジネスチャンスにも恵まれると思います。

 

鈴木:今のお話にあるように、お金というものの実態をどう捉えているかによって振る舞いが変わるんじゃないかと思いますね。極端な話、銀行残高がお金だと思っている人はまだまだ多いと思うんですよ。それを「わかっている人・わかっていない人」の差で、お金やビジネスのリテラシーも変わってくる気がします。

ただそれも無理のない話で、2000年に日本で発売された『金持ち父さん貧乏父さん』、2003年に発売された『ユダヤ人大富豪の教え』ぐらいまでは、ビジネスオーナーという考え方自体が日本に馴染みがなかったと思うんです。

お金をお金で増やすという金融の歴史も実は浅く、70年代にアメリカの、フィッシャー・ブラック氏とマイロン・ショールズ氏が金融工学でノーベル賞を取るまでは、お金というのは労働によって稼ぐものだと認識されていましたから。

その頃から徐々に「仕組みでお金を増やすことに優れている人が勝者」のような構図も生まれ始めました。一方でその煽りに乗せられて「過剰消費」をしてしまう人が増えたのもなんだかなぁ……と感じるところではあります。

歴史が新しいがゆえに、教育として普及していないのも無理のない話ですが。広告というのは自分の能力を超えた欲求を起こすように仕向けているところもあるので、ついローンを組んだりクレジット払いをしてしまうわけですよね。

今は世の中に情報がたくさん出ているので、自分を守ろうと思えば守れる。だから自己責任と言ってしまえばそれまでですけれど、情報を扱うには「知性」もある程度必要なんです。

約束を守る、という一見なんでもないことが、実はお金やビジネスの土台になっていることを知るのは、知性を養うための第一歩になると思います。

 

【第2部】本橋 へいすけ × 中里桃子

#03─コミュニティの活性化、新たなコミュニティの形

──コミュニティオーナーの実績が豊富な本橋さんと、コミュニティの専門家として出版もされている中里さんから見て、今後のコミュニティ運営のポイントは何だと思いますか?

本橋:オンラインサロンを作りたいと考えるメンバーの、主たる目的として一番多いのが「継続課金で安定収入」の仕組み構築です。

僕自身もオンラインサロン「for you」を運営する中でそのメリットを感じてはいますが、当然デメリットもあります。これからコミュニティを作って課金の仕組みを導入しようと考えているのであれば、まずはしっかりとメリットとデメリットを理解することが大切ですね。

オンラインサロンは人数が多くなるまでは労力に対して売上が立たないので、売上重視であれば高単価サービスを提供する方が簡単で目的に合っているよと伝えています。

一方で「お金以外の部分に価値がある」と感じる人にはコミュニティは本当にお勧めです。

サロンはさまざまな価値観をもった人たちが集まる場所です。目的もそれぞれなので、僕は「価値の多角化」を意識して運営しています。

例えば僕自身、最初はSEO対策が専門のWEBコンサルタントでした。それが今ではInstagramやYouTube, Twitter, TikTok などのツールも教えています。他にもビジネス全般のことやマーケティング、自己理解や習慣化、パーソナルトレーニングなど、多岐に渡るコンテンツをサロン内で提供しています。

こういった価値をヨコに広げるものもあれば、習熟度や理解度によって生まれるタテのレイヤーに対応するコンテンツ展開もあります。

仕組みとしては僕が全部を教えるのではなく、メンバーと一緒にサロン内で仕事をしながら、それぞれがもっているコンテンツを共有してもらうようにしています。そうすることでメンバー同士の距離も近くなり、お互いに支え合える関係になっていきます。

この話をすると「大変じゃないの?」とよく聞かれますが、そんなことはありません。僕はクリエイター気質なのでゼロイチで新しいことをやらないとすぐに飽きちゃう。それが根っこにあるので、むしろ楽しんでコミュニティに関われています。

こういった変化が好きだからこそ、サロン内では常にコンテンツの新鮮さが保たれ、継続的に参加してくれるメンバーも増えていく流れになっています。価値の多角化が好きで得意な人は、コミュニティ運営に向いていると思います。少なくとも僕にはぴったりですね。

 

中里:私の場合は、マネタイズの方向でコミュニティ作りはしなくなりました。私が敷いたレールの上を受講生に歩いてもらい、想定の範囲内で学び、成果を出してもらうのはこれからのコミュニティの形とは違うなと思っているからです。

そうではなく、関係性や余白を楽しめる空間づくりが、コミュニティの肝になるんじゃないかと考えています。

そういう意味で私がいま注目しているのが、お金を“逆向き”にする実験です。例えば外注費で5万円を払って、指示したものができあがってくるのってつまらないですよね。ほとんどは想定内か、時には想定を下回っていることもあります。

そこで試しているのが、コミュニティの参加者が私にお金を払うのではなく、私が参加者へお金を払うという仕組みです。具体的には、他社が主催する30万円のマーケティングセミナーに受講生を通わせて「そこでの学びを活かして私にコンサルティングをしてくれる?」という提案をしました。

それで私が得するか損するかというより、この実験を通して受講生の考え方、働き方が変わっていったら面白いなと思っているんです。仮に何の変化がなかったとしても、その時に「私はどんな感情を抱くんだろう?」と、それも楽しみなんです。

私の仮説では、コミュニティオーナーが教えたことを受講生がただ学ぶだけのスタイルよりも、不安に身を投じて現場判断ができる、ストレス耐性の高い人間に育つんじゃないかと考えています。

これからの10年、20年を考えた時、そういう力を身につけることのほうがよっぽど大事だと思うんですよね。

そういう意味では、私自身も自分のコミュニティで「余白」を感じられるような取り組みができるように意識しています。私と一緒にプロジェクトを体験したことがある人はご存じだと思いますけど、私は「これをやったらどうなるんだろう?」と自分でもプロセスが見えないことをコミュニティのメンバーにぶん投げてしまうんですよ。

ファシリテーションが上手い・下手じゃなく、そもそも見えてない(笑)

当然何が起こるのかわかりませんよね。そこに「余白」があるから、多種多様なたくさんの人を巻き込むことができるのだと考えています。

先日も「ももこ編集室」というコミュニティを立ち上げたんですけれど、なんと編集者として企画・編集した本が累計1100万部以上という大物プロデューサーの方が参加してくれました。これは道筋や最善が見えている、隙のないプロジェクト作りをしていると逆にできないことだと思ってます。

 

#04─人生100年時代のLIFE SHIFT. 起業とコミュニティに見出す資産形成

──人生100年時代を迎え、お金だけでなく、人との関係性や変化に合わせて対応できる能力なども「資産」と言われるようになりました。コミュニティ運営をする中でそれらを実感することはありますか?

本橋:いま話された定義の「資産」は、コミュニティにすべて含まれていると感じますね。特に僕が運営している「for you」は、価値の多角化を推進することでお互いが切磋琢磨できる環境が作られています。お互いにGIVEをし合える場所だからこそ、メンバー間の関係性も強くなり、そこからさらに良い循環が生まれています。

コミュニティ運営に関して3つの大切なことがあると僕は考えていまして、それが①情報、②挑戦、そして③つながりです。情報というのはそのままの意味ですが、やはりもっている情報の質とスピードで、生み出せるお金の桁も変わってきます。

2番目の挑戦は、常に自分が枠の外で活動することで、周囲から「タグ付けされる」ことに意味があるという考え方です。面白いことをやっている人間だと認知されると、それを見ている人たちと新たなつながりが生まれ、また新しい展開が生まれる。これが3番目のつながりに該当します。そういう関係性から生まれるビジネスって体温があるなと思うんです。

時代の流れをみても、お金をもらえるからやるお仕事よりも、人の温もりを感じられる働き方のほうが素敵ですよね。こんな風に考えていくと、コミュニティにはこれからの時代の土台になるものが、すべて入っているように感じます。

 

中里:私が「資産」というテーマで大切だと思うのが、ネタ作りです。貯金するよりも面白い経験をどれだけ積めたかが、これからの時代の資産になると思っています。例えばですけど、サハラ砂漠を走って爪が5枚全部剥がれちゃった経験とか(笑)。

私の活動のベースには「自分と人を信じる」というのがあります。そしてコミュニティ運営をすればするほど、筋が通っていく感覚があるんです。常に現状の外に飛び込んで、これまで登ってきたハシゴを自分で外し続けながら、「私このあとどうなっちゃうんだろう!?」っていうところにワクワクしていく。

だから私の定義する「資産」というのは、毎朝楽しくワクワクして目が覚める状態であり、「そのアイデア面白いね!」と一緒にやってくれる仲間の存在であり、実験を楽しんでくれるファンの存在であると言えます。

今回の話を聞いて「中里さんの考え方って面白い!」と感じてくれた人は、ぜひ一緒に私のコミュニティの中でいろいろ実験を楽しんでもらえたらと思いますね。

──コミュニティの最前線で、さまざまな挑戦をする鈴木さん、本橋さん、そして中里さんのお話を伺うことができました。本日はありがとうございました。

 

──PROFILE│登壇者プロフィール

株式会社女子マネ/コミュマネ協会
代表 中里桃子
https://www.facebook.com/MomokoNakazato

ワークスタイル研究所代表
ビジネスモデル構築専門コンサルタント
鈴木 秀一郎
https://www.facebook.com/ShuichiroSuzuki

オンラインサロンfor you運営
WEBコンサルタント
本橋 へいすけ
https://www.facebook.com/heisuke.motohashi

モデレーター:
株式会社ソレナ 大崎博之
https://www.facebook.com/H.Yuki2011

 

concept

“すべての人には「照らすべき一隅」があり、
「私は照らす光を持っている」という確信と、
「私にはその一隅を照らす責任がある」という
自覚を持つことが人を強くする”

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ということを伝える、あなたらしい選択肢を作るメディアです。