プロセスエコノミー中里桃子の記事
2021.07.29
プロセスエコノミーを実践者の視点でオンラインサロンの専門家・中里桃子がレポート
プロセスエコノミー中里桃子の記事
「プロセスエコノミー」が、制作過程そのものを販売することだと定義されたのは最近ですが、実は皆さんの身近にも存在しています。そして、私が2016年に起業してやってきたことも、まさにプロセスエコノミーでした。
前回の「プロセスエコノミーとは?」の解説に続き、今回は実践者としての体験を中心にお伝えします。
今回は、3本のうちの2本目です。ぜひ順番にご覧ください。
1. 【3分でわかる】プロセスエコノミーとは?オンラインサロンの専門家・中里桃子が解説
2. プロセスエコノミーを実践者の視点でオンラインサロンの専門家・中里桃子がレポート(本記事)
3. プロセスエコノミーを実践するためのポイント【企業編、個人編】
私が実践してきたことはプロセスエコノミーだった
私が「プロセスエコノミー」という概念に共感したのは、私がオンラインサロンで実践・体感してきたことが、まさにプロセスエコノミーだったからです。私は、2016年にオンラインサロンをつくり、運営をサポートをする事業をメインとして、(株)女子マネを設立。
2019年には『オンラインサロンのつくりかた』という本を出版しています。
多くのオンラインサロン運営に関わる中で、オンラインサロンの成否を分けるポイントが見えてきました。それは、オンラインサロンのタイプが、オーナーが完成形を売るだけもの(=アウトプットエコノミー)であるか、オーナーと参加者のやりとりによって成長変化していく過程を楽しめるもの(=プロセスエコノミー)であるか、という点です。 なぜなら、完成したコンテンツを淡々と提供していくだけのコンテンツの分割販売のようなオンラインサロンは、ネタのマンネリや参加者の成長によって退会が増えたり、オーナーにも飽きがきたりしてあまり長続きしない傾向にあるからです。
その一方でサロンオーナーが強烈なファンをつくり、サロンの継続率が高くなるのは、約束されているコンテンツや提供物が毎回変わったり、運営の方針が変更になるようなオンラインサロンなのです。
事前告知とは違うことをするわけですが、いきなりの変更ではなく、なぜそうしたのか、これから何をしようとしているのか、そこに至るまでの過程を逐次、オーナーが情報提供していきます。
だから、参加者もオーナーと同じ想いを共有し、コンテンツというよりはオーナー個人のファンとなり、何をやっても「あの人の動向が気になる」「あの人と一緒にやりたい」とついていくという現象が起きています。このタイプのオーナーを丸2年サポートさせていただきましたが、オンラインサロンの参加者をとても大切にする魅力的な方で、今でもその方の動向は気になります。
また、私自身も、小規模ながら会社員時代からメールマガジンを発行し、数千人の読者をもっています。その読者の方達に、独立や出版準備の話、果ては結婚や出産の報告などを行いながら、もう累計8年ほど配信し続けています。何度か配信システムを変えているのですが、ずっと読者でいてくれる人、全ての本を買って読んでくれている方もいます。
そして昨年、「教えることに限界を感じています」という内容を配信した時には、たくさんの応援メッセージをいただき、皆さんの励ましのおかげで、新たなプロジェクトとして、ワークブック制作をすることができたのです。
継続的な課金はしていませんが、この関わりかた、プロセスを見せているという意味ではプロセスエコノミー的だと感じています。
オンラインサロンとプロセスエコノミー
1記事目で、オンラインサロンもプロセスエコノミーのひとつです、とお伝えしました。ここで2つ、興味深い事例を紹介します。
1つ目は西野亮廣さんで、彼はこちらの動画で、「プロセスで課金してアウトプットは無償にする」という解説しています。(15分のあたり)映画の楽曲のPVをオンラインサロンの費用で制作し、オンラインサロンのメンバーはその制作過程を楽しむことができる。でも、完成物であるPVはYou Tubeで無償公開。つまり、制作過程のほうにより多くの価値があるとしたのです。【キングコング西野①】空想メディア:21年1月3日
作画・すずかつ氏
2つ目は、現在のオンラインサロンの仕組みを発明したのは評論家の岡田斗司夫さんではないかと思うことです。岡田さんは、2012年頃からFREEEX(フリックス)という組織を運営されていました。その組織は岡田さんが社長で、社員の給料は月額マイナス1万円。つまり、社員が社長である岡田さんに毎月1万円を給料として支払うという、通常とは逆の不思議な構造なのです。
社員は社長に給料を支払う代わりに、岡田さんのコンテンツを自由に使って収益をあげてもいいよ、という仕組み。岡田さんは社員からの給料のみを受け取り、アウトプットからの印税などの収益は組織と働いた人に還元されるようです。これを知った本当に当時の私は、本当にびっくりしました。 「岡田斗司夫さんと一緒に仕事をする」という体験・プロセスに月額1万円を払う価値があると感じる人たちが、それぞれ思い思いの活動をしていたのです。
こちらにかつて一緒に活動していた方の記事があります。
岡田斗司夫FREEexとは何か?https://blogs.itmedia.co.jp/yokoyamat/2014/12/freeex_1.html
私が2012年頃に岡田さんのこの活動を知った当時、すぐには理解できなかったのですが、2013年に立ち上げた読書会の手伝いを無償でしてくれる人と出会ったこと、そして自分自身も読書会の運営で、全力でただ働きをしていた体験から「何かを作り上げるまでの過程を経験すること」の価値を知りました。
この経験があったからこそ、「働くことが喜びになる環境や状況があり得るんだ。いつかこうした働きかたが当たり前になるかもしれない」と考え、今に至るのです。
ワークブック制作はプロセスエコノミーだった
2020年10月、私はクラウドファンディングでメンバーと資金を集めて『コミュニティの想いをカタチにするワークブック』というプロジェクトをスタートしました。
主に購入型のクラウドファンディングで、1冊3,000円から購入ができるのですが、同時に1冊+制作チームへの参加10,000円という募集をしました。
このリターンは「制作に関わることができる」という権利で、1冊購入の3倍以上の価格にも関わらず、約40名の方が賛同してくださり、ワークブックの制作がスタートしました。
いつもの私なら、大枠で私がやりたいことが決まっていて、その過程を少しチラ見せしながら「関わっている感」を演出するような、「限定情報を得ることができる」といった有料のメルマガのような運営になる予定でした。
しかし、今回に限っては、私自身が教えることの限界を感じて絶望している状態でした。もうこれ以上教えても成果が出ないから自分のやり方でやっても効果が出ないものになってしまう。従来の「私が全部仕切って教えて進める」では、この限界を超えられないと観念していたのです。
そのため、ミーティングの最初のところで「このワークブックの完成の理想の状態はあるんだけど、そこにいくまでのプロセスが全く見えていません。」と告白しました。
その結果、「こうすればカタチが見えてくるんじゃないか?」という提案をしてくれた数名にファシリテーションを任せて、私はとにかく定例会に顔を出す、判断すべきポイントも私よりも詳しい人がいれば任せてもいい、という関わり方で半年を経てワークブックを完成させました。
コミュニティを作りたい人、運営している人、コミュニティよりもワークブック(冊子)の制作に興味のある人、様々な方が制作過程に関わってくれたことで、私一人の経験で作るよりも遥かにいいものが作れたという実感があります。
また、ワークブックを手にとってくださった方からの反応も良好で、予期せぬことに、このプロセスに興味があるという仕事仲間からの質問攻めにもあっています笑
▼ワークブックの詳細・購入はこちらhttps://peraichi.com/landing_pages/view/communityworkbook
プロセスエコノミーを実践して見えてきた世界
プロセスエコノミーを実践してきた私の所感は、これからますますアウトプットエコノミーで差別化し、戦い、勝ち抜いていくことが難しい時代になる。だからこそ、プロセスエコノミーを上手に実践できることは、個人の生存戦略に大きく寄与してくるだろう、ということです。
起業5年目になるワタクシですが、オンラインサロンのつくりかたを「教える」という立場で3,000人ほどに講義をしてきました。「先生」という立場で人前に立ってきたのですが、先生としての自分に限界を感じていたのです。
何らかのノウハウを販売している立場の方には共感していただけるところが多いかもしれませんが、2020年はコロナになり、ビジネスを取り巻く環境が激変しました。これからも大きな変化は避けられませんし、そのスピードも情報の行き渡るスピードも想像の域を超えていくでしょう。そんな中で、私は「正解」を教える先生としてビジネスをすることに行き詰まっていました。
そこにきて「プロセスエコノミー」という言葉の出現と、尾原さんによる書籍の出版。起業して5年になる私自身が、アウトプットエコノミーの限界を感じていたタイミングだったので、激しく共感したのです。ぜひ書籍を一読されてみることをお勧めいたします。
https://www.amazon.co.jp/dp/4344038339/
次回は、プロセスエコノミーを実践したい方に向けてポイントを解説します。ぜひ、お楽しみに。いち早くお読みになりたいという方には、メルマガの登録をおすすめいたします。
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